軍事と熟練工 2014 8 17

 その国の軍事力を無力化させるには、
戦って滅ぼすことではなく、
その国の熟練工を消滅させることである。

書名 自衛隊と防衛産業
著者 桜林 美佐  並木書房

 数年前、ロシアが、フランスから、
ミストラル級の強襲揚陸艦を購入するというニュースを聞いて、
衝撃を受けた人がいるかもしれません。
 かつて、ソ連は、アメリカに次ぐ海軍力を誇っていました。
しかし、フランスから、ミストラルを購入するということは、
ロシアにおいて、造船技術が失われてしまったということを意味するからです。
 軍艦の製造には、多数の熟練工が必要ですが、
5年も、いや2年でも、軍艦の発注がなければ、
多数の熟練工は離散してしまうでしょう。
 高度な技術を持った熟練工も、
食べていくには、働いて、お金を稼がなければならないからです。
 それならば、外国から安くて優秀な兵器を買えばよい。
素人は、そう考えるでしょう。
 しかし、こんな戦略があるのです。
わざわざ、仮想敵国に自国の兵器を輸出するという「戦法」があるのです。
 部品を供給しなければ、兵器は、ただの鉄の塊です。
だから、戦後の日本が、いや平和ボケしている日本でも、
ひたすら国産にこだわってきた理由がわかるでしょう。
 外国から兵器を輸入した場合に、
もし故障して、修理に出すことになったら、
だいたい修理期間が半年、いや1年以上かかるでしょう。
これで戦えますか。
 軍事力と工業力は、表裏一体のものです。
いや、もっと正確に言えば、
軍事力と熟練工は、表裏一体のものです。
 軍事産業というと、大企業を連想しますが、
実は、大部分が、中小企業です。
その中には、町工場のような零細企業も含まれます。
 「戦車一両に、1,000社」と言われますが、
日本では、戦車を製造するのに、
関連企業が約1,300社に及ぶと推定されます。
 なぜ、関連企業が多いのか。
部品の多くを製造するのが、町工場などの中小企業であり、
その企業でしか作ることができない、
いわゆる「オンリーワン企業」が多いからです。

 2014年2月10日の産経ニュースWestには、こういうニュースがありました。
「マンホールに落ちる韓国の戦闘機、飛べない警戒機
それで韓国は、防空識別圏拡大とは」
 昨年12月、中国に対抗する形で防空識別圏拡大を決めた韓国だが、
防衛体制の実態は、お粗末そのものだ。
 防空識別圏を監視する早期警戒機は4機を導入したばかりだが、
整備不良で1機しか飛べない状態。
 スクランブル(緊急発進)する戦闘機も1機が、
マンホールに落ち込み大破するという「伝説的な事故」を起こしたばかりか、
ミサイル誘導用の電波が民間の携帯電話の周波数と一致するトンデモぶり。
 警戒機が飛べない理由は、ずばり「部品不足」。
軍用機に限らず航空機には、
決められた飛行時間ごとに交換しなければならない部品が多くあり、
航空機を導入する際は、こうした交換部品もセットで買うのが基本。
 韓国も3年分の部品を購入していたのだが、
なぜかエンジン関係など早急に必要となる部品を買っていなかった。
 その結果、不具合の多い機体を「部品取り用」にし、
修理の際は、この機体から他の機体へ部品を転用するという、
カニバリゼーション(共食い整備)を行っていた。
それで1年で(部品取り用機を含め)3機がジャンクと化し、
飛べるのは1機のみになってしまった。
(引用、以上)

























































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